第3章 表現のもつパワーのメモ(tks)
目次
認知のアーティファクト
表現をタスクに合わせる
表現は情報アクセスと計算をどう支援するのか
数の表現
自然さと体験的認知
ログ
5/2
第3章の冒頭パートを読んだ
5/4
認知のアーティファクトを読んだ
5/5
表現をタスクに合わせるを読んだ
5/7
表現は情報アクセスと計算をどう支援するのかを読んだ
5/9
数の表現を読んだ
5/11
メモの作成に入る
冒頭パートのメモを作成しはじめた
5/18
表現をタスクに合わせるのメモをした
5/27
メモを作成し終えた
メモ
心のもつパワーは過大評価されている
心の外に助けがなければ、すぐに制約を受ける
↕
心のもつ本当のパワーは心の外に自分たちの支援物を作りだすことによる
=ものが我々を賢くする
協同で行われる社会的行動
環境にある利用可能な情報
☆心のパワーを補完し増強するために作り出された認知のアーティファクト
計算や記憶の名人に敬意を払う
人間の心の限界を超えているように見えるから
しかし、そうしたスキルは人間の本質ではない
心の外から助けてくれる最も重要なものは、紙、鉛筆、それに対応する読み書きのスキル
=文字と紙が論理的思考とテクノロジーにブレークスルーをもたらした
人が作るアーティファクトの支援がなければ、数学も科学も教育も存在しえない
=ものが我々を賢くする
ソクラテスが「本は思考を破壊する」と主張した理由
内省のことを気にしていたから
内省:ものごとを深く考え、すべての言説に疑問をもち、検証する能力
↔読書=体験的
ソクラテスは小説や物語は評価しなかっただろう
ソクラテスが重視したのは問答形式の対話
対話の中で生じる疑問や吟味=内省のツール
↔本は返答ができない→本は対話ができない
=読書は受動的で、真剣に質問する機会のないまま著者の考えを受け入れさせてしまう
tks.iconソクラテスは再読をどう評価しただろうか
再読は著者と過去の自分と今の自分との三者面談
中世の読書は能動的なプロセスだった
中世の物語は対話が前提だった
読み手は補足説明と本文との関係を解きほぐしながら読む
今日の読者はソクラテスが怖れた状態
あまりにも早く読み、著者の考えに疑問を抱かず、反論することもない
本は読み方を知る人にだけの認知のための道具になる
認知のアーティファクトは道具に過ぎない
道具によって何ができるかは、道具はどう使われるかによる
本は、読み手が、書かれている内容について系統立てて内省していく方法を知ってはじめて、内省のための道具となるのである。
認知のアーティファクト
認知のパワーは抽象化と表現から生まれる
関係のない些細な部分を捨象し、別のメディアに表現すること=知の本質
tks.icon抽象化し、表現することが知の本質
記号を使って表現し、その記号を使って推論することができる
例:鉛筆を使って車を表現する
アーティファクトには、ものごとを単純化するある種の性質が備わっている
=アーティファクトによって複雑なことも把握できる
そこでの表現が社会的コミュニケーションのツールとして利用できる
表現は捨象されたものなのに、ずっとわかりやすくなる
=表現が人間の記憶にパワーと正確さを与える
良い表現とは本質を捉え、それ以外は意図的に省いたもの
表現≠表現されるもの
正しく抽象する→本質的なことに集中できる=推論や思考の能力を増強する
↕
間違えて捉える→紛らわしくなる、結論を誤る=推論や思考の能力を弱める
表現について
表現のシステムは2つの本質的な要素から構成されている
①表現されるものの世界(the represented world):表現される対象の世界
②表現するものの世界(the representing world):記号の集合。表現されるものの世界の何かを代替したもの。
表現のおかげで時間や空間の制約から離れて出来事、事物、概念を扱うことができる
表現をサポートするための仕組み=アーティファクト
認知のアーティファクトがサポートする表現は人工的に作られたもの
→形式や構造をタスクに合わせられる
メタ表現すら可能
たとえば、表現されるもの、表現するものの関係を表現できる
メタ表現によって高次の思考が可能になる
高次の思考:法則やパターンを発見する、新しい知識を形成する
考えを表現する→物理的な世界を超える
アーティファクト
アーティファクトには種類があり、機能が異なる
①体験のためのアーティファクト
世界を体験し、世界に働きかける手段を与える
出来事をあたかもその場にいたかのように体験させてくれる、その場にいてもアクセスの難しい情報を入手させる
例
望遠鏡は空間的に離れた場所にある物体に関する情報を与えてくれる
映画やレコードは、時間的空間的に隔てられた出来事を体験させてくれる
計器類はそれがなければ得られない機器の状態についての情報を与えてくれる
心と世界を仲介する
②内省のためのアーティファクト
表現に対する修正と働きかけの手段を与える
現実世界を無視させ、人工的な表現するものの世界に集中できるようにしてくれる
内省のプロセスはパワフル
↕
表現を現実と取り違えると危険
表現されないのは、重要でなかったのではなく、表現方法がわからない場合がほとんど
われわれが価値を認めるのは、測れる(表現できる)もの
表現をタスクに合わせる
問題を解くとは、解が自然に浮かび上がるように問題の表現を作ることに他ならない(Simon, 1981)
「15ゲーム」とチックタックトー(マルとバツ、三目並べ)の比較
15ゲームは表現の仕方のせいで難しくなっている
外部的な支援がほとんどない状態で内省させられている
①表現によってタスクの難易度が著しく変化する
「15ゲーム」とチックタックトーは同型問題(problem isomorphs)
原理的には同一で、表現の仕方でタスクの内容と難易度が変わる
②表現の選択の適切さは、問題に適用される知識やシステム、方法に左右される
人間にとってはチックタックトーの方が簡単、コンピューターにとっては15ゲームの方が簡単
タスクにあった表現のパワー
表現がまずいと内省を要する厄介なタスクに変えてしまう一方で、表現がよければ体験的なやさしいタスクに変える
=一方のモードでできないものでも、もう一方のモードであればできる
例:2つの都市を飛行機で行く計画を立てるタスク
『オフィシャル・エアライン・ガイド』(OAG)に準拠した表現
限られたスペースでもたくさんの情報が収まるようなデザイン
→ユーザーには大量の情報処理をさせる=タスクを内省的なものに変換してしまっている
OAGを使って計画を立てられるのは内省のパワーがあってこそ
tks.icon内省はすごい、でも・・・
情報を別の形式で表していれば、タスクは体験的になっていた
〈結論〉
タスクに合った適切な表現とは?・・・タスクによる
最適な形式はタスクに依存する=すべての目的に適したたった一つの表現などない
いつかそう遠くない将来に、すべての情報が電子装置の上で利用でき、同じ情報をさまざまな方法―種々のニーズにあったさまざまなレイアウト―で表示できるようになるかもしれない(p114)
tks.iconまさに現代はできるようになったのではないか
たとえば、文字で箇条書きにした内容でも、ChatGPTを使えば表形式にまとめることができる
今はまだどんな形でデータを入力しておくべきかを考えておかないと、あとからややこしいけれど、今後はそんなことも意識しなくてよくなりそう
表現は情報アクセスと計算をどう支援するのか
表示された情報を利用する人が抱えるタスク
1. 必要な情報を見つける
2. しかるべき結論を計算して得る
同じ情報でも表示次第で理解しやすくなる
図や表だとわかりやすいではなく、図や表といった表示がタスクに適切な表現であればわかりやすい
例:薬の処方
医者や薬剤師の立場では、薬のリストが適切
患者の立場では、時間帯のリストが適切
さらに、このケースではマトリクスが適切な表現だった
→認知のアーティファクトを適切に選べば、計算が楽になり、内省的なタスクは体験的なものに変わる
数の表現
数字の表現には加算的なものと、置換的なものがある
加算的:タリーマーク、ローマ数字
置換的:アラビア数字
どちらがいいという話ではない
=ある側面からはタスクを簡単にするが、別の側面では困難にするトレードオフがある
例:マッピング
パーセンテージは加算的な表現が向いている
図3.3は置換的な表現・・・内省的なタスクになった
図3.4は加算的な表現・・・体験的にタスクを実行できた
自然さと体験的認知
デザインの原理で重要なのは自然さ(naturalness)
①自然さの原理:表現の特性と表現されるものの特性が適合すると、体験的認知が支援される
空間的知覚的関係を表現に利用すると体験的思考がしやすい
↓
②知覚の原理:自然な知覚的空間的表現は優れるが、それは現実の知覚的空間的環境に類似した場合に限られる
数字は自然ではない
=数字は内省のためのツール
体験のためのツールだったらこんなに膨大な勉強が必要なわけがない
A:284と912の比較とB:284と312の比較だったら、Aの方が少し早く判断できる
頭の中で加算的な表現に変換しているから
もし棒グラフ(加算的な表現)で比較すれば、もっと早い
認知のアーティファクトが持つパワーは、表現が持つパワーに由来する。そのアーティファクトに必要な最適の表現は、実行するタスクに依存する。同じ情報も、タスクが違えば、違った表現が必要になる。表現を適切に選択することによって、困難のタスクが簡単になるのである。